「王様のブランチ」で
特集されました!

ヴァイタル・サイン
小学館文庫

著者  :南 杏子 
定価  :935円(税込)
発売日 :2023.10.06 
ページ数:432ページ

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女優

貫地谷しほりさん大絶賛!

「人は、人に傷つき、
人に苦しみ、
でも、人に救われるのだと
改めて感じさせられました」

医療現場の現実や限界を
リアルに描いたエンタメ長編!

二子玉川グレース病院で看護師として働く堤素野子は、31歳になり今後のキャリアについても悩みながら忙しい日々を過ごしていた。患者に感謝されるより罵られることの方が多い職場で、休日も気が休まらない過酷なシフトをこなすが、整形外科医である恋人・翔平と束の間の時間を分かち合うことでどうにかやり過ごしていた。
 
あるとき素野子は休憩室のPCで、看護師と思われる「天使ダカラ」という名のツイッターアカウントを見つける。そこにはプロとして決して口にしてはならないはずの、看護師たちの本音が赤裸々に投稿されていて……。心身ともに追い詰められていく看護師たちが、行き着いた果ての景色とは。

映画「いのちの停車場」やNHK連続ドラマ「ディア・ペイシェント」など、数々の話題作を送り出してきた、現役医師でもある著者の最新作!終末期の患者が多く入院する病棟で働く女性看護師の目を通して、医療現場の現実や限界をリアルに描いたエンタメ長編!

患者さんに、最期まで笑顔でいてほしいから--

推薦コメント

  • 「過酷な看護の現場に光を当てる
    緻密で鮮烈なカルテです」
    夏川草介(医師・作家)


    「人の死を最も間近で見る仕事、

    それはナース。
    読んでいて叫びたくなる。
    切ないのに、ページをめくる手が止まらない」
    中山祐次郎(外科医・作家)


    「生々しいまでに看護師の苦しさが
    伝わってきました。
    読み終えればわかります。
    この作品は医療従事者へのエールです」
    大塚篤司(近畿大学医学部皮膚科主任教授)
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著者のことば 単行本刊行時

主人公が女性医師でない物語を書いたのは初めてです。

 医療現場で患者さんや家族に最も近い存在が看護師さん。命の最前線にいる緊張やストレスがあるにもかかわらず、決して逃げずに献身的で、共感力があり、いつも笑顔を見せてくれます。そんな姿がとても魅力的で、神々しさすら感じていました。

 ところが、あり得ない事件が起きて驚きました。「点滴連続中毒死事件」――横浜市の病院で二〇一八年、看護師が入院患者を殺害したとして逮捕・起訴されました。点滴の中に消毒液を入れたというのです。事件はメディアに大きく取り上げられ、被害者は二十人以上にのぼるとも報じられました。一体何があったのか。それは他人事ではなく、深い原因が隠れているはず。容疑者の逮捕で終わりにしていい問題とは思えなかったのです。

 医療の現場は、そんなに単純ではありません。将来に禍根を残さないためには、罪を犯した者を糾弾するだけで解決したつもりになるのは危険です。しっかりと問題の根っこを掘り下げたいと思いました。

 小説にしようと思った一言があります。逮捕された看護師の供述とされる「自分の担当時間中に、患者さんに亡くなってほしくはなかった」という言葉でした。

 小説は、実際の事件とは全く異なる病院が舞台ですし、登場人物にモデルはありません。けれど先ほどの一言から、彼女がどれほど追い詰められていたかを想像すると、強い胸の痛みを覚え、そこを作品の軸にすることにしました。

 看護師として働く際の厳しい状況を描き出すためには、まず日常業務をできる限りリアルに描こうと努めました。それを知ってもらうことで、事件の理解がスタートすると思ったからです。

 お読みいただくと、看護師たちの仕事の辛さから目を背けたくなる場面があるかもしれません。同じような状況なら、果たして自分は同じ考えから完全に無縁でいられたか。決して許されることではないけれど、他人事ではない。犯人は、自分と地続きの人間である――そんなことを読者の皆さんに感じていただければ幸いです。

 看護師の仕事をしたことはありません。だからこそ誠実に書こうと努めました。誰かが追い詰められるとしたら、それは個人の問題だけでなく、社会構造の問題として解決しなければならないと思うからです。追い詰められそうになっている誰かの心に届けばとても嬉しいです。

 誰もが追い詰められない社会になることを願いつつ。

2021/08/18 小説丸より

読者レビュー 単行本刊行時
病院の看護師に焦点を当てた作品は、とても生々しく、大変なシフトで重責のある重たい仕事をされている風景がよくわかりました。
クレーマーの家族対応もあり、心身共に疲れ切ってしまうようなお仕事。一緒にドキドキハラハラしました。とても面白かったです。
(50代 女性)

医師が描いているので現実味があり、看護師のハードな職場で患者と向き合い、私生活を犠牲にしながら働いている主人公が切なく感じましたが、明るい将来を感じさせる終わり方だったのでちょっとホッとしました。
(50代 女性)

看護師さん目線での展開が面白いです!
(30代 男性)

医療の現場で働くナースの心情や実態をリアルに書かれていると思いました。続くコロナ禍、改めて医療従事者に感謝したいです。
(40代 女性)  

看護師をしていて日々の仕事に疲れてしまっていましたが、リアルな描写のなかの主人公の誠実さに救われました。
(30代 女性)

私は今年4月から介護福祉士として就職する20歳です。ヴァイタル・サインは看護師の話でしたがなぜか親しみを感じました。
私も辛くなったらもう一度この本を手に取りたいと思います!
(20代 女性)

著者プロフィール

1961年徳島県生まれ。日本女子大学卒。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入し、卒業後、都内の大学病院老年内科などで勤務する。2016年『サイレント・ブレス』でデビュー。他の著書に『ディア・ペイシェント』『いのちの停車場』『ブラックウェルに憧れて』『いのちの十字路』などがある。