よしよし、これでしばらくは黙っているだろうよと安心してたら、なんとキッタカは、あっという間に連載「瓢簞から人生」を一冊にまとめてしまった。そしてメールが届く。
「新刊の発売にあわせて連載を再開するというお話でしたよね!」。ウッ……となったが、返事しなけりゃ連載も始まりようがない。知らん顔をしておいた。
と、こんな追い打ちメールがくる。「新しい連載の題名考えました! 『瓢簞道中』ってどうでしょう。『瓢簞の細道』も俳人らしくっていいと思うんです」。
い、いかん、このままだと、また瓢簞になってしまう。夏井いつきの瓢簞シリーズ?冗談ぢゃないよ!
嗚呼、前回もそうだったのだ。「題名どうしましょう」というメールを無視していたら、「瓢簞から人生」というダサい題名が勝手に決まってたのだ。
よしよし、これでしばらくは黙っているだろうよと安心してたら、なんとキッタカは、あっという間に連載「瓢簞から人生」を一冊にまとめてしまった。そしてメールが届く。
「新刊の発売にあわせて連載を再開するというお話でしたよね!」。ウッ……となったが、返事しなけりゃ連載も始まりようがない。知らん顔をしておいた。
と、こんな追い打ちメールがくる。「新しい連載の題名考えました! 『瓢簞道中』ってどうでしょう。『瓢簞の細道』も俳人らしくっていいと思うんです」。
い、いかん、このままだと、また瓢簞になってしまう。夏井いつきの瓢簞シリーズ?冗談ぢゃないよ!
嗚呼、前回もそうだったのだ。「題名どうしましょう」というメールを無視していたら、「瓢簞から人生」というダサい題名が勝手に決まってたのだ。
編集者キッタカの猛攻をかわすには、こっちから打って出るしかない。キッタカが目をシロクロさせるような題名を叩きつけるしかない。ふん、そうだ! 「パパイアから人生」はどうだ。奴め、唖然とするに違いない。
目論見通り、キッタカは絶句した。そして殊勝なメールがきた。「まさか人生シリーズとは、敬服いたしました。これでいきます」と。私は、勝った気になって、メールの続きを読む。「ところで、パパイア? パパイヤ? どちらですか」と、きやがった。
そんなもんどっちでもエエやろと思いつつ、愛用の『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)を開くと「パパイア」になっているので、「パパイア」だと答えたら、食い下がってきた。「パパイヤの方が一般的ではないですか」「読者はパパ嫌〜ってダジャレを記憶しているのでは」と言ってくる。
編集者キッタカの猛攻をかわすには、こっちから打って出るしかない。キッタカが目をシロクロさせるような題名を叩きつけるしかない。ふん、そうだ! 「パパイアから人生」はどうだ。奴め、唖然とするに違いない。
目論見通り、キッタカは絶句した。そして殊勝なメールがきた。「まさか人生シリーズとは、敬服いたしました。これでいきます」と。私は、勝った気になって、メールの続きを読む。「ところで、パパイア? パパイヤ? どちらですか」と、きやがった。
そんなもんどっちでもエエやろと思いつつ、愛用の『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)を開くと「パパイア」になっているので、「パパイア」だと答えたら、食い下がってきた。「パパイヤの方が一般的ではないですか」「読者はパパ嫌〜ってダジャレを記憶しているのでは」と言ってくる。
キッタカ……なぜなのだ。君はメッチャ身長も高く、世間並みにはシューッとした男前なのに、なぜそんな親父ギャグにこだわる。
キッタカは尚も食い下がってくる。「講談社はともかく、ウチの小学館の大辞泉は『パパイヤ』です」「私が愛用する日本国語大辞典は『パパイア』だ」「ウチとしてはやはり小学館を尊重して」「何言ってんだッ、日本国語大辞典も小学館だろッ!」「……」。キッタカ、撃沈。
かくして、新しい題名で再スタートを切る。「人生について書いて欲しい」というキッタカの熱烈オーダーを裏切り、日常のどうでもいいようなこと、三日もたてば忘れてしまうようなことを、ヘラヘラと綴っていくつもりである。
……とここまで書いて、ハタと気づいた。結局のところ、キッタカの思い通りの時期に、連載を再開することになっているではないか。嗚呼、今回も奴の思惑にハメられたか……とも思う、パパイアから人生。はじまりはじまりである。
キッタカ……なぜなのだ。君はメッチャ身長も高く、世間並みにはシューッとした男前なのに、なぜそんな親父ギャグにこだわる。
キッタカは尚も食い下がってくる。「講談社はともかく、ウチの小学館の大辞泉は『パパイヤ』です」「私が愛用する日本国語大辞典は『パパイア』だ」「ウチとしてはやはり小学館を尊重して」「何言ってんだッ、日本国語大辞典も小学館だろッ!」「……」。キッタカ、撃沈。
かくして、新しい題名で再スタートを切る。「人生について書いて欲しい」というキッタカの熱烈オーダーを裏切り、日常のどうでもいいようなこと、三日もたてば忘れてしまうようなことを、ヘラヘラと綴っていくつもりである。
……とここまで書いて、ハタと気づいた。結局のところ、キッタカの思い通りの時期に、連載を再開することになっているではないか。嗚呼、今回も奴の思惑にハメられたか……とも思う、パパイアから人生。はじまりはじまりである。
1957年愛媛県生まれ。松山市在住。俳句集団「いつき組」組長。京都女子大学文学部国文科卒業後、8年間の中学校国語教諭を経て俳人へ転身。「第八回俳壇賞」「第四十四回放送文化基金賞」「第七十二回日本放送協会放送文化賞」「第四回種田山頭火賞」受賞。創作活動に加え、俳句の授業「句会ライブ」、「俳句甲子園」の創設にも携わるなど幅広く活動中。MBS『プレバト!!』俳句コーナー出演をはじめ、多くのメディアでも活躍。二〇一五年より俳都松山大使。句集に『伊月集 龍』『伊月集 梟』『伊月集 鶴』、本書の姉妹本に『瓢簞から人生』がある。
撮影/後藤さくら