元精神科看護師が描く、“心の救命治療”の奇跡。
こころのカルテ
潜入心理師・月野ゆん
元精神科看護師が描く、“心の救命治療”の奇跡。
こころのカルテ
潜入心理師・月野ゆん
潜入心理師は、希死念慮をもつ患者のこころに潜入して『核』と呼ばれる原因をほぐす仕事。主人公自身も『核』となる過去を持ちつつ、日々患者を治療。潜入心理師を目指したのは、その理論を研究している滝博士の著書と自身の過去から来るものだった。
しかし、作中で色々な出会い、経験を通して人は生きているだけで尊い。役に立つかどうかではないと実感します。私も数年前からふとした時に希死念慮がやってきます。
バグを起こす脳のせいだ。と本人もわかっていてもうまくコントロールできない時もあります。そんな私からすると素晴らしい研究と思うとともに、ダイバーにも負荷がかかる治療に、人の心や脳は一人ではコントロールできない時代になっていることを表現しているように思いました。
どうか、人に寄り添いたいと願う主人公たちを見守っていきましょう。
誰の役に立たなくても生きていていい。人は生きているだけで尊い。
辛い過去、現状でこの場から楽になりたいと人は思う。それが作用して死にたいという方向のものを生み出す。でも人はただ生きているだけでいい。誰のせいでもない。あなたのせいでない。生きていてさえいれば、生きることは何もかもを包みこんで拒絶しない。
これは著者の魂の叫びだ。願いだ。祈りだ。特殊な世界が描かれているのではない。生きている人の尊さを身体の芯から感じた。命が美しく光り輝いた。
つらい記憶に蓋をしながらそれでも何度も思い出しては心が傷つき絡まっていく、本当に心の中で【絡み】という現象が起きているのではとリアルに感じます。
だからこそ、死ぬことが救いと囚われた心に、生きていて、生きる事こそ救いになるからと潜入心理師たちの強い想いが伝わってきます。
自分たちも経験してきた痛みや後悔に向き合いながら、患者のむき出しの傷に触れる強さと優しさを持っている、人を救えるのは人でしかないのだと思いました。
目覚めても患者を取り巻く現状は変わっていないだろうけれど、死への渇望は消え、生きようという思いがきっと宿っている。
そう信じられて、夢のような、でもいつかこんな風に心を救う技術と潜入心理師が生まれたらと願いたくなりました。
潜入心理師…はて?という感じから読み始めました。
どんな人の中にも、外見からはわからない「絡み」があり、その内面に入り込み、冷静に「絡み」をほどいて行く仕事。ただ、その人に同調しすぎると自身も取り込まれてしまうという…。やりがいはあるけれど、危険で難しい仕事。その仕事にチームとしてお互いに信頼し、真剣に立ち向かう人々の葛藤や心情に惹き込まれ、一気に読みました。