第169回直木賞ノミネート!

警察東京分室
著者  :月村了衛 (つきむら りょうえ)
定価  :1,980円(税込)
ページ数:320ページ

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第169回「直木賞」
候補作!

第169回芥川賞・直木賞の候補作が発表されました。『香港警察東京分室』がノミネート! 著者・月村了衛さんは、今回が直木賞の候補初選出となります。

テロリストを追え!圧巻の国際警察小説。
香港国家安全維持法成立以来、日本に流入する犯罪者は増加傾向にある。国際犯罪に対応すべく日本と中国の警察が協力する――インターポールの仲介で締結された「継続的捜査協力に関する覚書」のもと警視庁に設立されたのが「特殊共助係」だ。
だが警察内部では各署の厄介者を集め香港側の接待役をさせるものとされ、「香港警察東京分室」と揶揄されていた。メンバーは日本側の水越真希枝警視ら5名、香港側のグレアム・ウォン警司ら5名である。

初の共助事案は香港でデモを扇動、多数の死者を出した上、助手を殺害し日本に逃亡したキャサリン・ユー元教授を逮捕すること。元教授の足跡を追い密輸業者のアジトに潜入すると、そこへ香港系の犯罪グループ・黒指安が襲撃してくる。対立グループとの抗争に巻き込まれつつもユー元教授の捜索を進める分室メンバー。やがて新たな謎が湧き上がる。なぜ穏健派のユー教授はデモを起こしたのか、彼女の周囲で目撃された謎の男とは。疑問は分室設立に隠された真実を手繰り寄せる。そこにあったのは思いもよらぬ国家の謀略だった――。

アクションあり、頭脳戦あり、個性豊かなキャラクターが躍動する警察群像エンタテイメント!

著者エッセイより(2023/4/21「小説丸」掲載)

  • 何を隠そう、『香港警察東京分室』は小説家デビューのはるか以前に思いついたタイトルだ。そのときは男二人のバディもので、アマチュアにはありがちなことだが、数十枚書いたところで放棄してしまった。我が長編第一作『神子上典膳』を書き始めるより前の話であるが、香港が中国へ返還された後であり、「早く書かないとまずい」と思ったことを覚えている。

    その後年月が流れ、小学館の編集者の皆さんと歓談していた折、ふとこのタイトルを口にしたところ、STORY BOX誌の編集長(当時)がえらく食いついた。「ぜひそれでお願いします」と。まったく予期せぬことであった。言わばタイトルだけで企画が決まったのだ(この話を他誌編集長にしたところ、「それはウチが欲しかった」と言われた)。

    こういう〈ご縁〉はときたまあって、いつどのタイミングで誰に話すか、すべては巡り合わせである。他誌編集長に最初に話していたら、そちらで決まっていたかもしれない。

    小学館からは要望が一つだけあり、「アクションを入れて欲しい」ということだった。当方は異存なく了解した。

    ともかく私は、このタイトルで作品を書くことになった。なにしろ雨傘運動どころか、香港国家安全維持法成立後である。当然内容はゼロから考え直すことになる。現在の香港情勢を反映させるべく、関連資料を読み漁った。その結果、大きなテーマをつかむことができ、この作品を今の時代に執筆する意義を明確に見出せた。

    分室メンバーは日本警察から五人。香港警察から五人。合わせて十人の登場人物がいるわけだ。それぞれどういう人物なのか。

    まったくのノーアイデア、ノーイメージから書き始めた。にもかかわらず、この十人の描き分けは成功したようで、「全員の個性がはっきりしている」と好評だった。

    中でも特に好評だったのは日本側トップの水越管理官で、この人物の造形には少し悩んだが、窮すれば通ずるで、ある人をモデルにするというアイデアを思いついた。

    私が一体誰をモデルにしたのか、それは絶対の秘密である。
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著者インタビュー

著者プロフィール

月村 了衛(つきむら りょうえ)
1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒業。2010年『機龍警察』でデビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトМ1851残月』で第17回大藪春彦賞、同年『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。他の著書に『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』『ビタートラップ』『脱北航路』などがある。

撮影/黒石あみ

「香港警察東京分室」書店員レビュー

かなり高い期待値を遥かに超えて、もう本当にむちゃくちゃ面白かった。
エンターテイメント小説のあらゆる要素を詰め込んで、生み出されたその極致。誰もが楽しめること請け合います。(六本木蔦屋書店 峯多美子さん)
分室に集められた魅力的なメンバー。息もつかせぬ心理戦と攻防、手に取ったら最後までページをめくる手が止まらない!(あおい書店富士店 鈴木裕里さん)

日本の現状にも危機感を抱かせる、ドキュメントや報道では取り込めない内容を、エンタメに仕上げた月村先生の筆力に圧倒されました。(水嶋書房くずはモール店 和田章子さん)

人間にはどうしても譲ることのできない一線がある、と思われます。国家への忠誠であったり、自分への信念であったり、人それぞれが持っているプライドのようなものかもしれませんね。本当に大切なものは何なのか? 自分が守るべき人は誰なのか? 考えさせられた作品でした。(恭文堂書店 菅原豪さん)

分室に集められた魅力的なメンバー。息もつかせぬ心理戦と攻防、手に取ったら最後までページをめくる手が止まらない!(あおい書店富士店 鈴木裕里さん)
月村了衛作品(小学館刊)

東京輪舞(小学館文庫)

昭和・平成の日本裏面史を「貫通」する公安警察小説!
かつて田中角栄邸を警備していた警察官・砂田修作は、公安へと異動し、時代を賑わす数々の事件と関わっていくことになる。
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それらの事件には、警察内の様々な思惑、腐敗、外部からの圧力などが複雑に絡み合っていた――。
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